住宅ローンの借り換えを申し込む際に、職業が自営業だと審査が厳しくなるというのは本当でしょうか?
これは正確にいうと厳しいというよりも、個人の信用力と同時に「会社(事業)の信用力」も必要となるということになります。
そもそも自営業者の収入は把握しにくいと言われています。
理由としては、
1,収入が把握しにくい
2,本業の業績が悪くなると、自己資金を投入せざるを得ない
ということが挙げられます。
【本当にそれだけ給料もらっているの?】
ローン審査時に収入を証明する書類として、会社員ならば会社が発行する源泉徴収票を提出します。
自営業の場合は、納税証明書(税務署)や所得証明書(役所)などを収入証明として提出することとなります。
しかし、この収入証明書が自営業者に限っていえば現実の収入と乖離していることがあるんです。
どういうことかというと、会社の業績が悪くなると実際に給料は支払わなくても、会計データ上は支払っているように見せることができるからです。
会計データ上は役員報酬が支払われているようになっていれば、税務処理としては問題ありません。
*具体的には短期借入金で個人から会社にお金を貸しているように会計処理(詳しくは税理士さんにご確認を)
納税証明書や所得証明書は税務署に提出された決算データをもとに計算されて発行されるので、短期借入金で処理されていると実際の収入が見えなくなってしまうんです。
だから、所得証明書では「所得金額が○○○万円」と表記されていても、実際にそれだけの収入があるかどうかは明確に分からないんです。
これが会社員ならば源泉徴収票に表記された給与額が、間違いなく個人の銀行通帳に振り込まれています。
だから源泉徴収票を提出さえすれば、金融機関としてはある程度正確な金額が把握できるので審査も早いです。
雇用される会社員と違って自営業者の場合は、収入が把握しにくいことが金融機関の審査を難しくしているという現実があるんです。
さらにもう一つ審査を難しくする特徴が、自営業者にはあるんです。
それは何かというと、「個人試算=会社資産」という構造にあります。
【自営業者は業績が悪くなると自己資金を投入するでしょ!?】
一旦支払われた役員報酬も会社の業績によっては、無くなってしまう可能性があることも懸念材料の一つとなります。
自営業者の収入は、ある意味会社の運用資金とイコールとも考えられます。
たくさんの給料をもらっていても会社の業績が悪くなると、個人の資産を会社運用のために投入せざるを得ないことがあるのです。
会社の運転資金を銀行から借入れできればいいのですが、いざという時は自己資金で賄わないといけない状況も考えれます。
そういう背景もあって、会社員のように「収入=個人資産」とならないのことが、金融機関の審査を難しくする要因とされています。
【自営業者は不安定】
それだけ自営業者というのは、お金の出入りが雇用されているサラリーマンと比較すると不安定な訳です。
そういうこともあって、自営業者が住宅ローンの借入れを申し込む場合は、個人の所得証明書はもちろん会社の業績もチェックされます。
実際に法人化している自営業者が住宅ローンの借り換えを地銀に申し込んだところ、下記の証明を求められました。
1,安定継続した税込み年収が250万円以上
2,現在の事業を2年以上営業していること
3,自営業者の方は過去2年とも250万円以上で、直近2期決算にて損失がなく安定した収益があること
個人の収入を証明すると共に、事業(会社)の収益も問題ないことを証明しないと融資は受けられません。
まあ、お金を貸す側からすると当然のことだと思います。
それだけ自営業者の信用力というのは、金融機関も分かりにくいということなんです。
【節税対策も面倒な条件になり得る】
節税のために配偶者を役員として、役員報酬を分散させている自営業者の方も注意が必要です。
基本的には個人の収入が審査対象となるのですが、申告すれば配偶者の役員報酬も含めて世帯収入として審査を受けることができます。
しかし、その場合にも
1,配偶者の年収も250万円以上
2,配偶者は連帯保証人となる
などの条件が付帯されるというケースがありました。
とにかく自営業者本人ですら分かりにくいのに、その妻の収入も同じように分かりにくいんでしょうね。
主債務者が返済不可能となった場合にのみ連帯保証人に対して借入残高の返済を請求するとのことですが、同じ会社で働いてるから同様に返済不可能になると思うんですけどね。
連帯債務よりは連帯保証の方がいいかと思いますし、ペアローンだと事務手数料が別々に必要になるのを考えると連帯保証もやむ無しということですかね。
【自営業者は信用力が低いから、借りるための準備は必要です】
収入自体が不明瞭で会社の業績次第で個人資産の内容も悪化する特徴がある自営業だけに、金融機関も何重にも信頼性を担保しようとするのです。
中には同じ銀行の住宅ローンに申し込んでも、従業員は審査に通って経営者は審査落ちしたという笑えない話もあるくらいです。
住宅ローンの借入れはもちろん借り換えをするにしても、自分と会社の信用力を上げておく必要があります。
=信用力を上げるためにすること=
1,個人の収入を上げる
ローンを組むために個人の収入を上げておいた方が審査は有利に進められます。
そのためには少なくとも借り入れる前年度の役員報酬を上げておく必要があります。
収入証明書は前年度収入のものを提出するために、借り入れる本人の役員報酬を意識して高めに設定しましょう。
2,事業は赤字決算としない
ローン審査時には、個人資産だけでなく会社の信用力も提示する必要があります。
直近の2期~3期は黒字経営なのはいうまでもありませんが、赤字になった場合でもその内訳を説明することで心象をよくすることも可能です。
この辺は税理士さんに相談してみると、いろいろとアイデアをもらえます。
3,節税対策の資産を提示する
自営業者の場合は、個人と事業で節税対策をしていることも多いかと思います。
・個人:小規模企業共済
・事業:倒産防止共済、生命保険
これらの外部で積み立てている資産も、ローン申込時に説明することで信用力をアップするための交渉材料になります。
節税対策を継続的に行っている場合は、その資産内容もまとめて提示できるようにしておきましょう。
【で、結局借りれるの?借りれないの?】
ここまで自営業や個人事業主の方には厳しい内容を書いてきましたが、事業が安定して収益を上げていれば問題なく住宅ローンの借り換えはできます。
銀行からいろいろな提出資料は求められますが、それらを全て提出すれば住宅ローンの借り換えは充分に可能です。
ただし、下記のように会社員よりも借入れ条件が厳しくなる場合があります。
・金利が高くなる
・返済期間が短い
・満額で借入れできない
それだけ自営業者の借入れは審査や条件も厳しくなる傾向にあります。
特に新規で申し込む銀行の場合は、なおさら厳しく審査を行われることになるでしょう。
こればっかりは「なんでそんなに厳しいの?!」と憤っても仕方ありません。
世の中そういうものだと割り切って、それらの条件を一つ一つクリアして信用力を作り上げていくしかないんです。
金融機関によって審査基準や提出書類の内容も変わってきますので、借入れしたい銀行や金融機関に相談してみるのが確実で早いです。